2016年3月22日火曜日

2016.3.22 もうひとつの中学生日記 〜「少年三白眼」の感想から〜

案の定、不条理ギャグに悲鳴を上げるナリタ。当のタナカすらも「今読み返すとさすがに引くところもある」と言い出す始末。それならばなぜ、この作品に惹かれ、今なお手にしたくなるのか?本編とは関係ないマニアックさの魅力について語ります。中学生生活が楽しくてしかたなかった、という人いたら教えてほしい!

15:26〜 ホンタナ的ライフハック「Prime nowのおそろしさ」
24:14〜 感想回
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2016年3月15日火曜日

2016.3.15 「少年三白眼」私屋カヲル

自分でも良くわからない作品をなぜか取り上げたくなる…タナカは春になるとそういう気分になるようです。今回紹介するのは、恐ろしい三白眼を持つ中学生、阿久津ヒロムを主人公とした青春マンガです。今度こそ普通の中学校生活を送りたい…そんな悲しくもつつましい願いを胸に、ヒロムは転校先の門をくぐります。そこにはさらに個性的な生徒や教師がいて?!と、一見普通の作品のように思えますが、シュールかつテンションの高いギャグ性がこの作品の方向性を既存の枠にとどめていないようにタナカには思えたんです。そうなんです。

19:13〜 紹介回
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2016年3月8日火曜日

2016.3.8 一貫性は続くよどこまでも 〜「転職面接必勝法」の感想から〜

久しぶりのタナカ感想回です。やや緊張しながらも、転職や仕事にこの本が与える効果について会社員らしく(?)語りだすタナカ。目標や夢がある人だけでなく、今の仕事に悩んでいる人、自分の仕事の意味を見いだせない人にもオススメしたい理由とは。さらに就職活動や、はたまた恋愛についてまで、マッチングと一貫性の重要性について話は盛り上がります。

9:40〜 ホンタナ的ライフハック「できる研究者の論文生産術」ポール・J・シルビア
22:56〜 感想回
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2016年3月1日火曜日

2016.3.1 かわいい比較論 〜「無印結婚物語」の感想から〜

「恐怖小説ですらある」と、ナリタは本作が描く結婚のもうひとつの側面に戦慄を覚えます。「こんな人だとは思わなかったー」「なんで私だけがこんな目にー」思い描いていた理想と現実との乖離。ナリタはそこに見え隠れする、何かと比較してしまう心理について切り込んでいきます。そのキーワードは「かわいい」?!結婚に限らず、個と個がそれぞれを尊重し合うことの意義について語り合っていますので、多少のノロケはどうぞご容赦願います!

10:22〜 古典コテン「死後」正岡子規
22:55〜 感想回
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2016年2月16日火曜日

2016.2.16 冬休みのお知らせ

事前告知が無く申し訳ありませんが、今週と来週は配信をお休みさせて頂きます。
次回配信は、おお、三月一日の予定です。よろしくお願いします。

2016年2月9日火曜日

2016.2.9 細井智彦「転職面接必勝法」

前回紹介した本の感想回は次回に持ち越しということで、今回は久しぶりのナリタ紹介回をお送りします。取り上げる本は新ジャンル、ノウハウ本!「就職面接は二度とやりたくない」とぼやくタナカに、かつて就活を経験した時期にこの本を読んで面接の準備が少し楽しくなったとナリタは言います。もっともつまらなそうなものに楽しさを与える本というのはすごい、とのこと。就職活動中の学生の皆様、あるいは転職を検討している社会人の皆様のご参考になれば幸いです。

9:50〜 解説の解説(綾辻行人「深泥丘奇談」より)
21:46〜 紹介回


(来週・再来週は配信はお休みです)

2016年2月2日火曜日

2016.2.2 「無印結婚物語」群ようこ

面白鋭い現実描写に定評のある、群ようこ先生の作品を紹介します。人生の一大イベント、結婚。夢を抱いても抱かなくても、いずれ訪れる現実は無情に問いかけます。「これで本当によかったのか」と。様々なケーススタディ的な小編から「結婚」を多角的に俯瞰できる、問題提起というか問題備忘録的な短編集です。

13:50〜 ホンタナ的ライフハック「タナカの初タブレット」
24:02〜 紹介回

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2016年1月27日水曜日

Add書き ー「オールラウンダー廻」関連ー

「”公務員の刺繍”事件」

タナカ大学一年生の春。
なんとなく入ってみた合気道部にも少しずつ慣れてきた頃。
しかし中高男子校だったので男女でワイワイやるにはまだ慣れない頃。

その部では、ユニホームとして”つなぎ”を作ることになっていた。
そしてその”つなぎ”には、個人のニックネームの刺繍を入れることになっていた。
一年生が集まってその名入れについて話し合っていると、誰かが
「タナカはなんか公務員っぽいから、”公務員”でいいんじゃね?」
と言い、
「それいい!」
と他の一年も同意した。

数日後、タナカの手元には明朝体で”公務員”と刺繍の入ったつなぎが届いた。
タナカは合気道部を去った。

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もう十五年ほど前の話だが、今でも武道とか格闘技とかは苦手である。
合気道そのものは興味深かったけれども、他にも「”スイカの皮”事件」など
部員との価値観の溝がどうにも埋めらなかった経験が後を引いている。

話をメグル君に戻すと、この作品に出てくる修斗の選手達は皆、
「なぜ格闘技をするのか」ということを、答えの有る無しは別にして
自らに問いかけている点で価値観を共有している。
価値観を共有しながら、自分らしい格闘スタイルを作り上げ、
そして互いにぶつけあい、高め合う。
そんな彼らは本当に生き生きしている。

刺繍やスイカにこだわらなければ、もっと本質的な共感が生まれたら、
もっと合気道を、武道を、格闘技を楽しめたのかもしれない。

しかしながら、ドラマ『世界で一番パパが好き』で明石家さんまが
「心の傷に時効は無いんですよ!」と言っていたように、あの「事件」は
これからも僕を武道から遠ざけるだろう。それでいいのだ。(タナカ)

2016年1月26日火曜日

2016.1.26 君は勝負しているか 〜「オールラウンダー廻」の感想から〜

身も心も傷つきながら、それでも勝負をする。なぜこんなことをしているのか?と自問する姿は、リアルな格闘とは無縁のナリタの心を揺さぶります。「勝つこと」「負けないこと」「強くなること」は同じなのか、それとも違うのか。日常の中に「勝負」を意識することに気づかされる感想回となりました。

16:22〜 ホンタナ的ライフハック「マンダラートをホンタナ感想に使ってみた」
29:54〜 感想回
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2016年1月19日火曜日

2016.1.19 「オールラウンダー廻」遠藤浩輝

今回ご紹介するのは総合格闘技「修斗」を題材とした青春マンガです。美術部に所属しながらもどこか高校生活をエンジョイしきれない主人公の廻(メグル)。何気なく始めた格闘技ですが、幼なじみとの再会・対決、ジムメイトとの練習、そして勝利と敗北とを経験しながら廻は心身ともに成長していきます。躍動感あふれる格闘シーンと高校生らしい日常とが絶妙に混じり合う、新年が盛り上がる作品です。

20:10〜 ホンタナ的ライフハック「ナリタ家の大掃除」
45:40〜 紹介回
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2016年1月12日火曜日

2016.1.12 笑ってもいられない内部監査スペシャル2016

明けましておめでとうございます!うるう年申年も張り切って参ります!
さて年始はもうすっかり慣例化した、Dr.Kことキド先生をお迎えしての内部監査です。2015年のタナカとナリタの言動を斬る!斬られる!と思いきや、話題は本編になかなか辿りつきません。三十路のおっさん三匹が酒も飲まず(ホントです)あーだこーだと語って二時間強!これでいいのかホンタナ!と思ったアナタはたぶん正しい!
今年もそんな感じでゆるりと進めて参りたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。

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2015年12月22日火曜日

2015.12.22 日本とエストニアの美をたっぷり語ろうスペシャル

2015年最後の配信は、なんと海外からのゲスト、矢野マーリアさんをお招きしてお届けします!エストニアの人気ブロガー・作家であるマーリアさんがオススメするのは、谷崎潤一郎の「陰影礼賛」と「鍵」の二作品。日本に魅せられるきっかけともなった作品の魅力、そして実際に日本に来て分かったこと、そして母国エストニアについて、などなど、話題は多岐にわたります。文化も言葉も越える良さ、美しさについて盛り上がりました!

マーリアさんのブログはこちら
エストニアでの結婚式についてのお問い合わせは、weddingestonia@yahoo.comまで。
著作「Minu Tokyo」はこちら。写真も多く、見てるだけでも楽しいです。













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本年もリスナーの皆様、そしてゲストにお越しいただきました皆様には
大変お世話になり、心より御礼申し上げます。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
よいお年を!

2015年12月15日火曜日

2015.12.15 登山家の生き様と死に様 〜「運命を分けたザイル」の感想から〜

2015年最後の感想回です。タナカの紹介とはちょっと違った雰囲気で戸惑うナリタ。ドキュメンタリータッチの作品に寄せる期待が、今までと違ってきたことにナリタは気づきます。あわせて最近公開された「エベレスト3D」についても感想を述べ合ってみました。山のドラマの多彩さと深刻さは、人を惹き付けてやみません!

16:06〜 解説の解説「本の帯について」
32:52〜 感想回
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2015年12月8日火曜日

2015. 12.8 「運命を分けたザイル」ケヴィン・マクドナルド

2015年最後の紹介回をお届けします。実際に起こった山岳遭難事故について、本人映像と再現映像とを織り交ぜながら物語は着々と進みます。「ひとりを見捨てることで、もうひとりが助かる」という、究極の問題を前に、人はどのように行動するのか。そして、その後の彼らの運命はどのように分かれていくのか。ただ生きて帰ることのみをテーマとしない、異色の山岳ドラマをお楽しみください。

22:00〜 新コーナー「ホンテナンス」
43:35〜 紹介回
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2015年12月1日火曜日

2015.12.1 モンスターがいてもいいんだ 〜「ミザリー」の感想から〜

今回はホンタナ史上初の試みでお届けします。主人公だけでなく、恐怖の元凶であるアニー氏のこともナリタは「分かる」と感嘆します。ある種の狂気を持つ人物でも、狂気なりの信念をつらぬく姿は共感を呼ぶのかもしれません。また狂気を描くためには正気もまた真摯に描く必要があることに気づかされます。名作の名に恥じない最強のエンターテイメントを堪能しました!

9:00〜 ホンタナ的ライフハック+古典コテン「車中も亦愉し」小津安二郎
25:25〜 感想回
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2015年11月24日火曜日

2015.11.24 「ミザリー」スティーブン・キング

タナカ悲願の翻訳小説紹介です!小説も映画も有名すぎる本作ですが、その圧倒的なエンターテイメントさにタナカはぶちのめされます。サスペンス、サバイバル、ラブロマンス、そして作家という生き様を、これでもかと描き出す筆力にはもう舌をローリングストーンズせざるをえない!今までキング作品を読んでこなかったのが恥ずかしくなる、タナカの懺悔回をお楽しみください。

10:00〜 「コドモノスケッチ帖 動物園にて」竹久夢二
19:29〜 紹介回
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2015年11月17日火曜日

2015.11.17 本質を見極める(全体から?細部から?)〜「アイデアを探せ」の感想から〜

ショートショートの名匠が魅せるテクニックに感銘を受けたナリタ。「大雑把に全体を見ること」と「細部を極めること」は相反するものなのだろうか?ともに本質を見極める手法としてはむしろ同じなんではなかろうか?物語の作り方から、物理、数学への取り組み方へと話題は広がります。普遍的な事象を、極限まで削りだすことは数式もショートショート同じなのかもしれません。

15:45〜 ホンタナ的ライフハック「パジャマをたたむ話」おぎやはぎのメガネびいき
30:19〜 感想回
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2015年11月10日火曜日

2015.11.10 一蹴で魅せる”らしさ” 〜「マッハ!!!!!!!」の感想から〜

紹介と感想が前後しまして申し訳ありません。
見慣れないアクション映画にただ笑うしかないナリタ。タイ映画”らしさ”を推すタナカに対し、そもそも”らしさ”の楽しみ方が分からないというナリタ。ステレオタイプなのに、なぜか惹かれるジャンルや作家・監督が持つ”らしさ”とは何なのか。思わず「待ってました!」と言いたくなるエンタメの醍醐味を、ナリタとタナカが掘り下げます。

10:40〜 私も投稿してみました「Webライター募集」
21:21〜 感想回
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2015年11月5日木曜日

Add書き ー「マッハ!」関連ー

二〇〇四年の夏、僕は橋の下で待ち合わせをしていた。
深夜だった。
約束の時間はすぎているが、レイトショーの上映時間にはまだ余裕があった。
僕は蚊に食われないように手足を動かしながら、先輩が来るのを待っていた。

ムエタイ映画「マッハ!!!!!!!!」。
迫力はあるが、よく分からないタイトル。
よく分からないから、安く見られるレイトショー。
理屈はまあ通っている。
その先輩はこの映画がとても見たい、と言った。
その先輩は筋肉好きだった。

僕は映画そのものより、レイトショーを楽しむことのほうが重要だと思っていた。
見に行く当日、一緒に行く予定だった仲間は、バイトがレポートがと一人また一人と脱落し、結局自分とその筋肉好きの先輩だけが行くことになったのだ。

かなり遅れて先輩が橋の下にやってきた。
自転車を飛ばして何とか劇場に到着すると、
「トニー・ジャーが実際にくぐり抜けた実物大の障害」
が置いてあった。
なるほどかなり小さい隙間だったが、すでに日付も変わり、眠気が襲ってきている中でそれはやはりただの隙間でしかなかった。

映画が始まった。意外と人が入っていた。
聞き慣れないタイ語、見慣れぬタイの寒村と都会。
眠ってしまうと思った。
結局一睡もせずに最後までしっかりと見た。
すごい映画だ、と思った。
先輩はトニー・ジャーの背筋に感銘を受けたようだった。

劇場を出るとさすがに眠く、そのまま解散して別々に帰った。
翌朝、先輩は研究室の仲間たちにトニー・ジャーの筋肉について熱く語っていた。

あれから十数年。
先輩は結婚して一児の母となり、僕の結婚式にも家族で来て頂いた。

先輩、今でも筋肉好きですか。
僕はあの時の映画を紹介させてもらいました。
ありがとうございました。(タナカ)

2015年11月3日火曜日

2015.11.3 「アイデアを探せ」阿刀田高

今回はワケあって二回連続で紹介回をお届けいたします。数々の長編・短編・ショートショートを生み出してきていた著者のアイデアの源泉を惜しみなく披露する本作。アイデアの見つけ方はもちろん、大小のアイデアをいかに作品に結実させるかといったテクニックを作者の実例を交えながら解説してくれます。「妄想族」にあえぐタナカの一助となるか?!エッセイとしても楽しめる新・発想本です。

10:15〜 古典コテン「文法の原理」イェスペルセン
34:35〜 紹介回
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2015年10月27日火曜日

2015.10.27 「マッハ!!!!!!!!」プラッチャヤー・ピンゲーオ

ムエタイ映画の代名詞といえる作品を紹介します。とある村の青年が、盗まれた仏像の頭を取り返すべく悪人たちと対決する、という何ともシンプルな内容。頼りになるのは、手、足、肘、膝を駆使したムエタイのみ!CGなし、ワイヤーなし、スタントなし、早回しなし!単純明快ながら、ムエタイとアクションとのコラボレーションの美しさ、格好良さが極まっています。トニー・ジャーすごいぜ!

16:45〜 ホンタナ的ライフハック「人生がときめく片づけの魔法」近藤麻理恵
31:57〜 紹介回
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2015年10月20日火曜日

2015.10.20 共感、傍観、菊池寛 〜「壬生義士伝」の感想から〜

「人に刃を向けることすらも共感できる」と絶賛のナリタ。登場人物たちが良心の呵責に悩みながらも生きる姿…そういう作品が好きだ、とナリタは再確認します。雑食の割に好き嫌いのあるタナカは、ナリタのスタンスに触発され、あらためて作品との向き合い方について考え始めます。意外なところから盛り上がりを見せる感想回となりました!

13:35〜 古典コテン「無名作家の日記」菊池寛
39:35〜 感想回
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2015年10月13日火曜日

2015.10.13 「壬生義士伝」滝田洋二郎

浅田次郎原作の映画化作品を紹介します。幕末、ある田舎侍が新撰組へ入隊した。名は吉村貫一郎。かの斉藤一をもうならせる剣の腕を持ちながら、腰が低く、他の隊員からは守銭奴と見下される吉村。彼はそこまでしてなぜ新撰組へ入ったのか。逆境の中、自分の信義を貫こうとする姿は多くの人を引きつけます。多くの受賞歴を持つ大作であり、タナカの生きる意味を思い直させた作品をどうぞお楽しみください。

12:38〜 私も投稿してみました「ナリタによる序説」
29:42〜 紹介回
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2015年9月29日火曜日

2015.9.29 お休みのお知らせ

今週と来週の2週間はホンタナの配信をお休みさせていただきます。
次回配信は、10月13日です!どうぞお楽しみに!
 

2015年9月27日日曜日

Add書き ー「ひとり旅」関連

 それから吉村昭の『彰義隊』を読んでみた。
 恥ずかしながら、新撰組は知っていたけどこちらの存在は全く知らなかった。ざっくり説明すると、徳川慶喜を守ろうとする有志の者たちが作った部隊で、新政府軍と上野で決戦を繰り広げた、言わば江戸レジスタンスだ。

 決戦、敗退、奥州への潰走と、結果だけ見ると彼らは負けてしまった。まあ事実だからしょうがないのだけれど、それでも本書を読むと”結果”は膨大な”事実”の一面であることを思い知らされる。そして、事実もまた、多くの人の想いが重なった一瞬を切り取った事象でしかない、ということも。

 隊員たちは、徳川慶喜が水戸へ移送された後、江戸にいた皇族の北白川宮能久親王(輪王寺宮)を、混乱の江戸から何とか逃がそうと奔走する。輪王寺宮もまた、江戸の民を守りたい一心で朝廷と交渉するも逆に”朝敵”とみなされてしまう。彼らを突き動かしているのは、それぞれの「感謝」や「恩」であり、「抵抗」や「憎しみ」はその二次産物なのだ。

 やはり、吉村先生が事実に固執するのは、事実の裏に隠された本当の人間性を知りたいからなんだろう。『戦艦武蔵』や『高熱隧道』のように何となく知っている話よりも、全く予備知識のなかった『彰義隊』だったからこそ、そのことを強く感じることができて良かったなあ、と思うのである。輪王寺宮のその後はけっこう意外な展開を迎えるので、興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

 ちなみに、Kindleで漫画「るろうに剣心」を読んでいたら、少年剣士弥彦の父はまさに彰義隊の一員として義に殉じたという設定で、自分の中の幕末像がどんどんアップデートされていくような感じでとても楽しい。遅すぎるような気もするけど。(タナカ)




2015年9月22日火曜日

2015.9.22 作家が愛する事実 〜「ひとり旅」の感想から〜

「これが人間のできることなのか」と驚きの色を隠せないナリタ。史実というドラマを描くため、ほんの一行の描写のために各国を飛び回り、または納得のいかない作品は何度でも白紙に戻すという著者。想像力の限界を知り、事実を重視する。言葉では簡単ですが、途方もない労力と、埋もれた物語を探る嗅覚の鋭さに、タナカ・ナリタはタジタジするばかり。ノンフィクションの巨人、ここに極まれり!
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15:33〜 古典コテン「物を大切にする心」種田山頭火
28:47〜 感想回

2015年9月15日火曜日

2015.9.15 「ひとり旅」吉村昭

ドキュメンタリー作家の大家、吉村昭のエッセイ集を紹介します。歴史、戦史における大小の事件を綿密な取材力で書き上げる著者。「現実は小説より奇なり」をモットーに、資料探しに北へ南へ奔走する姿、そしてその資料から見いだしたものを小説へと昇華させる著者の姿は圧巻の一言。吉村作品のひとつの文章に込められた意味と深さをあらためて味わえる作品です。

7:46〜 古典コテン「受動的抵抗の倫理と実行」マハトマ・ガンジー
19:02〜 紹介回
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2015年9月11日金曜日

Add書き ー「海ちゃん、おはよう」関連

 子供の誕生を前にして男というものはすぐに父親になれないという話がある。
 よくよく納得できる話だが、女性側のこんな心境をつづったエッセイがあった。

実際、わが子に始めて授乳したときの、あの恐ろしさはなんだろう。(中略)自分の無力さを突き付けられるような、人間としての最も重い責務を背負わされたような、途方もない気持ちに陥るのだった。もしかしたらそれは、悲しみと名づけてよい感情だったかもしれない。

 小川洋子の『深き心の底から』からの抜粋である。
 これを読んで僕はなんだか少し安心したのだ。母親だってうろたえるんだ、と。

 たしかに”子供をもつ親”に変化していく実感は女性のほうがリアルで段階的だと思う。日に日に大きくなるお腹の子の重み…それは女性でしか得られない至福の時間、というようなイメージが何となくあった。
 しかし”恐ろしさ”、”悲しみ”という言葉で、生まれた子と向き合うことも母親にはあり得るのだ。誤解のないようにしておくと、小川先生は出産に悲嘆していたのではなく、子供が無条件の喜びを与える存在ではないことをすでに予感していたのである。

 子供の可能性の大きさにたじろぐのは、父も母もきっと同じなのだ。
 要は、その子と向き合い続ける覚悟をするかどうかであって、男には海ちゃんの父イサム君のような不器用な覚悟も時にはあるだろうから、世の妻や母の皆さんにはどうぞおてやわらかにお願いしたいと思った次第。

 感想回をアップした後にタイトルは「そして、父になる」でも良かったかなあと思ったのだが、結局やめた。同名の映画は絶対に見たら泣くと思ってまだ見ていない。いつか紹介できる時が来るといいですなあ。(タナカ)

2015年9月8日火曜日

2015.9.8 あたふたしてても世界は進む 〜「海ちゃん、おはよう」の感想から〜

第一子に対する父親の狼狽っぷりは、まさに未来の自分像と重なって「勉強になります」と感心するナリタ。新しい命とどうやって向き合えばいいのか、母となった妻との関係はどうなるのか、会社との折り合いをどうつけるのかー。世のお父さんがたが直面したであろう難問の数々を、疑似体験できる本作。父親予備軍の皆様、読んでおいて損はないですよ!

8:55〜 妄想族「Add書き始めてみました」
16:53〜 感想回
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2015年9月1日火曜日

2015.9.1 「海ちゃん、おはよう」椎名誠

椎名家の第一子誕生を描いた私小説を紹介します。中途半端だった仕事が面白くなりだし、しかし心のどこかではもっと大きな世界を夢見ている主人公。そんな矢先に第一子の報告を受け、うろたえつつも新しい世界へと踏み出していく姿が本作には描かれます。著者の作風を生み出す大きなきっかけを与えてくれた「海」ちゃん、母として強まる妻、そして父として奮闘する主人公の三人模様をお楽しみください。

17:11〜 ホンタナ的ライフハック「貼ってはがせるカレンダーシート」
31:07〜 紹介回
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