2015年9月29日火曜日

2015.9.29 お休みのお知らせ

今週と来週の2週間はホンタナの配信をお休みさせていただきます。
次回配信は、10月13日です!どうぞお楽しみに!
 

2015年9月27日日曜日

Add書き ー「ひとり旅」関連

 それから吉村昭の『彰義隊』を読んでみた。
 恥ずかしながら、新撰組は知っていたけどこちらの存在は全く知らなかった。ざっくり説明すると、徳川慶喜を守ろうとする有志の者たちが作った部隊で、新政府軍と上野で決戦を繰り広げた、言わば江戸レジスタンスだ。

 決戦、敗退、奥州への潰走と、結果だけ見ると彼らは負けてしまった。まあ事実だからしょうがないのだけれど、それでも本書を読むと”結果”は膨大な”事実”の一面であることを思い知らされる。そして、事実もまた、多くの人の想いが重なった一瞬を切り取った事象でしかない、ということも。

 隊員たちは、徳川慶喜が水戸へ移送された後、江戸にいた皇族の北白川宮能久親王(輪王寺宮)を、混乱の江戸から何とか逃がそうと奔走する。輪王寺宮もまた、江戸の民を守りたい一心で朝廷と交渉するも逆に”朝敵”とみなされてしまう。彼らを突き動かしているのは、それぞれの「感謝」や「恩」であり、「抵抗」や「憎しみ」はその二次産物なのだ。

 やはり、吉村先生が事実に固執するのは、事実の裏に隠された本当の人間性を知りたいからなんだろう。『戦艦武蔵』や『高熱隧道』のように何となく知っている話よりも、全く予備知識のなかった『彰義隊』だったからこそ、そのことを強く感じることができて良かったなあ、と思うのである。輪王寺宮のその後はけっこう意外な展開を迎えるので、興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

 ちなみに、Kindleで漫画「るろうに剣心」を読んでいたら、少年剣士弥彦の父はまさに彰義隊の一員として義に殉じたという設定で、自分の中の幕末像がどんどんアップデートされていくような感じでとても楽しい。遅すぎるような気もするけど。(タナカ)




2015年9月22日火曜日

2015.9.22 作家が愛する事実 〜「ひとり旅」の感想から〜

「これが人間のできることなのか」と驚きの色を隠せないナリタ。史実というドラマを描くため、ほんの一行の描写のために各国を飛び回り、または納得のいかない作品は何度でも白紙に戻すという著者。想像力の限界を知り、事実を重視する。言葉では簡単ですが、途方もない労力と、埋もれた物語を探る嗅覚の鋭さに、タナカ・ナリタはタジタジするばかり。ノンフィクションの巨人、ここに極まれり!
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15:33〜 古典コテン「物を大切にする心」種田山頭火
28:47〜 感想回

2015年9月15日火曜日

2015.9.15 「ひとり旅」吉村昭

ドキュメンタリー作家の大家、吉村昭のエッセイ集を紹介します。歴史、戦史における大小の事件を綿密な取材力で書き上げる著者。「現実は小説より奇なり」をモットーに、資料探しに北へ南へ奔走する姿、そしてその資料から見いだしたものを小説へと昇華させる著者の姿は圧巻の一言。吉村作品のひとつの文章に込められた意味と深さをあらためて味わえる作品です。

7:46〜 古典コテン「受動的抵抗の倫理と実行」マハトマ・ガンジー
19:02〜 紹介回
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2015年9月11日金曜日

Add書き ー「海ちゃん、おはよう」関連

 子供の誕生を前にして男というものはすぐに父親になれないという話がある。
 よくよく納得できる話だが、女性側のこんな心境をつづったエッセイがあった。

実際、わが子に始めて授乳したときの、あの恐ろしさはなんだろう。(中略)自分の無力さを突き付けられるような、人間としての最も重い責務を背負わされたような、途方もない気持ちに陥るのだった。もしかしたらそれは、悲しみと名づけてよい感情だったかもしれない。

 小川洋子の『深き心の底から』からの抜粋である。
 これを読んで僕はなんだか少し安心したのだ。母親だってうろたえるんだ、と。

 たしかに”子供をもつ親”に変化していく実感は女性のほうがリアルで段階的だと思う。日に日に大きくなるお腹の子の重み…それは女性でしか得られない至福の時間、というようなイメージが何となくあった。
 しかし”恐ろしさ”、”悲しみ”という言葉で、生まれた子と向き合うことも母親にはあり得るのだ。誤解のないようにしておくと、小川先生は出産に悲嘆していたのではなく、子供が無条件の喜びを与える存在ではないことをすでに予感していたのである。

 子供の可能性の大きさにたじろぐのは、父も母もきっと同じなのだ。
 要は、その子と向き合い続ける覚悟をするかどうかであって、男には海ちゃんの父イサム君のような不器用な覚悟も時にはあるだろうから、世の妻や母の皆さんにはどうぞおてやわらかにお願いしたいと思った次第。

 感想回をアップした後にタイトルは「そして、父になる」でも良かったかなあと思ったのだが、結局やめた。同名の映画は絶対に見たら泣くと思ってまだ見ていない。いつか紹介できる時が来るといいですなあ。(タナカ)

2015年9月8日火曜日

2015.9.8 あたふたしてても世界は進む 〜「海ちゃん、おはよう」の感想から〜

第一子に対する父親の狼狽っぷりは、まさに未来の自分像と重なって「勉強になります」と感心するナリタ。新しい命とどうやって向き合えばいいのか、母となった妻との関係はどうなるのか、会社との折り合いをどうつけるのかー。世のお父さんがたが直面したであろう難問の数々を、疑似体験できる本作。父親予備軍の皆様、読んでおいて損はないですよ!

8:55〜 妄想族「Add書き始めてみました」
16:53〜 感想回
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2015年9月1日火曜日

2015.9.1 「海ちゃん、おはよう」椎名誠

椎名家の第一子誕生を描いた私小説を紹介します。中途半端だった仕事が面白くなりだし、しかし心のどこかではもっと大きな世界を夢見ている主人公。そんな矢先に第一子の報告を受け、うろたえつつも新しい世界へと踏み出していく姿が本作には描かれます。著者の作風を生み出す大きなきっかけを与えてくれた「海」ちゃん、母として強まる妻、そして父として奮闘する主人公の三人模様をお楽しみください。

17:11〜 ホンタナ的ライフハック「貼ってはがせるカレンダーシート」
31:07〜 紹介回
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